g-kenknの日記

ボルネオ・peace・Memorial

読了、「死線を越えて」

 若い頃から、賀川豊彦という社会運動家の名前は知っていた。その著書「死線を越えて」も度々聞いていたが、読む機会はなく今に至った。賀川が生まれたのは神戸だが、彼の実家は徳島だったと知ったのは私がこの地に来てからで、偶々私が徳島新聞の読者の手紙欄に平和について投書したのがきっかけで、鳴門市にある賀川豊彦記念館の運営委員をしている人が私の投書に意見を述べられ、新しい平和運動の連絡先として記念館が協力して下さることになった。

 そんな縁で読む機会を得た「死線を越えて」。彼の原点は社会運動家ではなく、福祉実践者だったという発見があり、私は今興奮している。多分大正の初期、彼が20代中頃に書かれたこの小説は、彼の自伝的要素を多く含んでいると言われる。主人公新見栄一は、自ら貧民窟に飛び込み、極貧の人、病人、アル中と思しき人、障害のある人、行倒れ、みなしご、‥誰であれ助けを求められれば拒まない。明らかに犯罪者であっても、彼は受け入れ自分の場所(家)に招き入れる。服がない人には自分の服を脱いで着せ、寝る場がなければ自分のせんべい布団に入れる。今流にいえば、福祉ニーズのある人を分類するのではなく、全て受け入れ、全力で出来る助けをする。正に実践の原点、文字通りの"With"なのだ。体験がなければ書けない貧民窟の描写は圧巻という他ない。字数が尽きたから止めるが、何れ再び機会を得て書きたい。(9月14日記)